2011年06月18日
■ゾロの野望
ゾロの夢は「世界一の剣豪になること」。
それはゾロ自身の野望であり、親友くいなとの約束です。
で、ルフィの仲間になる時、ゾロはこんなことを言っていました。
ゾロはあくまでも自分の野望のためにルフィの仲間になりました。
さそったのはてめぇだ
野望を断念するようなことがあったら
その時は腹を切っておれにわびろ!
(1巻)
もともとゾロにとって野望がすべて。他に優先されるものは何もなかったはず。
例えそれがルフィの命であっても・・・です。
ですが、ルフィ達と旅をしていく中でゾロの大切な何かは変化していきます。
象徴的だったのは、スリラバークでのこの場面でした。
ゾロは自らの野望を捨て、バーソロミュー・くまからルフィを守ろうと懇願するのです。
船長一人守れねェで
てめぇの野心もねぇだろう
(50巻)
二人の約束のとおりなら、本来命を差し出さなければならない(腹を切らなければならない)のは、
ルフィの方だったはず。ですが、逆にルフィを守るために命を差し出したのはゾロでした。
ゾロの中で野望を超えるものが見つかった瞬間だったと私は思います。
■土下座と野心に勝るもの
そんなゾロですが一味がバラバラになった後、また土下座をします。
今度の相手はなんと宿敵の鷹の目のミホーク。

(61巻)
ここでゾロが取った行動は、ミホークに剣の教えを乞う事。
世界一の大剣豪になる為には目の前にいる敵を倒さなければならないのですが、
その本人に向かって「剣を教えてくれ」と言い出したのです。
この言葉を聞いたミホークが「恥を知れ」「お前を過大評価していたようだ」と吐き捨てたように、
剣士のプライドを捨てていると言えます。この時、ゾロの中で一体何が起きたのか・・・。
続けて、なぜ敵と見定めながら頭を下げ教えを乞うのか、何の為にだ!と問われたゾロは、

お前を超える為・・・
(61巻)
と答えます。ゾロはあくまでも自分の野望を口にします。
ゾロの求めるものは今も昔も何も変わっていません。
ミホークに勝つために海に出て、自分の野望を叶える為にルフィの仲間になる。
東の海でミホークに果敢に挑み、敗北してもなお大剣豪になることを誓う。
そして、ここでもすべては「お前を超える為」だと言います。
でも、求めるものが変わらなくても「求める理由」が昔と今では大きく変わっていたようなのです。
ミホークはそこに気付き、ゾロの気持ちを代弁してくれます。
敵に教えを乞う恥をかいてまで、ミホークを超える強さを欲しがるゾロの心の中にあったもの。野心に勝るものを見つけたようだな
お前のような男がプライドを捨てるときは
必ず誰かの為だと決まってる
(61巻)
それは誰かの為に強くなりたいという気持ちでした。
他の仲間たちが、ルフィの「
チョッパー「お前の力になれるならおれは本物の怪物にだってなりたい」
サンジ「お前が海賊王になる為におれは料理人として世界一のサポートをしてやる」
ナミ「だから助けてあげるの 今度は私が」
ブルック「何かお役に立つ方法は・・・」
ロビン「誰かの為に強くなりたいなんて考えた事もなかった」
フランキー「だからルフィ 乗り越えて行こうぜ 新世界の荒波も」
ウソップ「お前が海賊王になる為に おれは本物の狙撃の王様になってみせる」
と、みんながルフィの為に強くなりたいと誓っていたように、ゾロもルフィを海賊王にするために強くなりたい。
その一心の末に出た土下座だったわけで、ゾロの本心は
「ルフィを海賊王にする為に、お前(ミホーク)を超える強さを手に入れたい」なのです。
だから、プライドを捨てても、見栄えのしない行為であっても、ミホークに教えを懇願したのだと思います。
思い返すと、二人が出会ったときにルフィは言います。

海賊王の仲間なら
それくらいなってもらわないとおれが困る
(1巻)
ゾロが世界一の剣豪になってもらわないとルフィは困るのです。
ゾロが世界一の剣豪にならなければ、ルフィは海賊王になれないのです。
自分の夢は互いの夢、ルフィの海賊王とゾロの大剣豪の夢は出会ったときから繋がっていたように感じます。
■ミホークは何の為に
反対に、ミホークは何の為にゾロに剣を教えるのでしょうか。
本人も言いますが「自分の首を狙う剣士を自分の手で育てる」という、
理不尽な願いをなぜ受け入れるのでしょうか。
ミホークは東の海で出会った時からゾロに何かを感じていた事は間違いありません。
敗北が何かを教え「生き急ぐな・・若き力よ」と殺さずに生かした事からも分かります。
それに「おれを超えてみよロロノア」という言葉は、
自分を超える者がロロノア・ゾロであって欲しいと望んでいるかのようです。

おれを超えろ!
(6巻)
元々、ミホークがゾロに特別な気持ちを抱いていた(一目を置いていた)事も理由の一つだと思います。
けれど、決め手はゾロが誰かの為に強くなろうとしていたからです。
とは言っても、自分を倒す相手に剣を教えるのはやはり理解が難しいところ。
で、そのヒントは「コウシロウの教え」と「強さの果て」にあるような気がしています。
■コウシロウの教えと最強の剣
アラバスタのMr.1戦。鉄を斬る事ができなかったゾロは「自分に足りないものは何か」と、
師匠コウシロウの言葉を思い出します。
ゾロはこの教えを思い出し、何も斬らない剣が「ものの呼吸を聞き、剣にその意志を伝える事」だと悟ります。いいかい 世の中にはね
何も斬らないことができる剣士がいるんだ
だけどその剣士は鉄だって切れる 同じ刀でね
(21巻)
「呼吸を聞くこと」。これもコウシロウが教えたかった事の一つなのですが、
一番に伝えたかったのは次の部分だと思うのです。

"最強の剣"とは・・・
守りたいものを守り斬りたいもの斬る力
(21巻)
野心や野望のために振るう剣は剣ではない・・・。
守るべき相手(仲間)がいて、その為に振るう剣こそが最強の剣だと教えているのです。
東の海でゾロの剣はただの野心に満ちた凶暴な剣でした。
けれど、今ミホークの目の前にいるゾロには守りたい相手(仲間)がいて、
守りたいもののために剣を極めようとしています。
コウシロウの最強の剣とミホークがイメージする最強の剣が同じものかどうかは分かりません。
でも、東の海で感じた「心力の強さ」。そして今回の「守りたいもの」。
今のゾロに自分を超えるために必要なものが揃っている・・・、
そう感じたからこそミホークは剣を教える気になったのだと思います。
■強さの果てとルフィの夢の果て
最後に、なぜミホークはゾロを最強の剣へ導き、自分を超えさせようとしているのかという話です。
東の海での戦いの中、ミホークはゾロに聞きます。
「強さの果て」。それは世界一の大剣豪になった先に何を望んでいるのかという事なのですが、何を背負う
強さの果てに何を望む
(6巻)
この時のゾロは何も望んでいなかったように思います。最強がすべてでしたから。
で、私は今でも何も望んでいないと感じてしまうのですが(ゾロの性格的にも)、
「ルフィを海賊王にする為に、世界一の大剣豪になる」と決意したゾロにとって、
「強さの果て」はルフィの「夢の果て」に自然な形で繋がっていくのだと思います。
【参考】
タイトルはエースですが、この中で、ルフィの夢の果ての話をちょっと書きました。
ワンピース ポートガス・D・エースに起きた出来事の意味を考える
ミホークはマリンフォード頂上決戦で、ルフィの強さをこう感じます。
ミホークはルフィの目指すものが海賊王であることも、能力や技じゃない
―その場にいる者達を次々に自分の味方につける
この海においてあの男は
最も恐るべき力を持っている!
(57巻)
シャンクスが次の時代を懸けた男であることも知っています。
そのルフィの恐るべき力を目の当たりにした時、ゾロとルフィ、この二人が作っていく
新しい時代を見てみたいとミホークは思ったのかも知れません。
東の海で二人に感じた何かが、確信に近づいたからこそ、いいチームだ
また会いたいものだな
お前達とは・・・・
(6巻)
自分を超える力をゾロに与えようと思ったのではないのかなと、思ったりするわけです。
■あとがき
思えば、シャンクスもルフィに「ほう・・・おれたちを超えるのか」と言って、大切な麦わら帽子を託しています。
シャンクスとミホーク・・・、かつては敵だったようですが、新しい時代に懸けるという想いは一緒なんでしょうか。
ただ、気になっているのは、ルフィとシャンクスには「戦う理由」は見当たらないんですけど、
ゾロはミホークと戦い、倒さなければならないんですよね。
師匠と弟子の関係になっても、敵であることは変わらないわけで。。
ゾロがミホークを超える日がいつくるのか・・・、どのようにして超えるのか・・・。
うーん、わくわくです。。
というところで終わりです。
ここまで読んでいただいた方、おつかれさまでした&ありがとうございますm(__)m
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